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BLOG 2026.09.06

建設現場の自動化に使う国の予算要求が、前の年の4.36倍になりました

8月28日、国土交通省が来年度(令和9年度)の予算の要求内容を公表しました。

そのなかに、こう書かれた項目があります。

「フィジカルAIの導入をはじめとするi-Construction2.0、建築・都市のDX等の『インフラ分野のDXアクションプラン』の推進 [438億円(4.36)]」

かっこの中の4.36は、今年度の当初予算に対して何倍を求めているか、という数字です。同じ資料に並ぶ他の項目は、流域治水が1.17倍、大規模地震対策が1.40倍、交通分野の脱炭素化が1.98倍。そのなかで、この一行だけが4.36倍になっています。

そして、要求の中身を一つずつ読んでいくと、増やそうとしている先がはっきりしています。増えた分が向いているのは、大手ゼネコンの大規模現場ではありません。地方自治体の発注と、そこで工事を受けている地元の会社です。

概算要求とは何か、そしてまだ決まっていません

先に、この資料の性格をはっきりさせておきます。

概算要求は、各省庁が財務省に対して「来年度はこれだけ必要です」と出す要望書です。この時点では決まっていません。実際の金額が固まるのは、年末の予算編成のときです。要求額から削られる項目もあります。

それでも読む値打ちがあるのは、金額そのものより、国が来年度どこに重心を移そうとしているかが、そのまま並んで書いてあるからです。発注者である国や自治体が何を求めるようになるかは、工事を受ける側の来年以降の条件に直接つながります。

4.36倍が、どれくらい突出しているか

倍率は前年度の当初予算に対するものです。額そのものの大きさとは別に見てください。
倍率は前年度の当初予算に対するものです。額そのものの大きさとは別に見てください。

金額そのものでいえば、流域治水の7,473億円のほうがはるかに大きい額です。438億円は、国土交通省の要求全体(8兆7,694億円)のなかでは小さな項目にすぎません。

見るべきなのは伸び方のほうです。数千億円規模の従来からの柱が1.1倍から1.5倍で推移しているなかで、この項目だけが4倍を超えている。規模の大小ではなく、増やす方向として選ばれたということです。

なお、同じ資料には「DXの推進等 44億円(9.84)」というもっと大きな倍率の項目もありますが、こちらは統計や行政手続きのデジタル化で、現場の話ではありません。

増やした分は、何に使われるのか

要求書には、この438億円で進める取り組みが箇条書きで並んでいます。上から順に、こうです。

  • 地方公共団体におけるICT施工の導入に向けた技術者支援の促進
  • 施工データの高度利用(ICT施工ステージⅡ)による現場全体の効率化の実現
  • BIM/CIMの普及拡大に向けたデータマネジメント環境等の構築
  • 公共工事におけるフィジカルAIを活用した自動化・遠隔化技術等の新技術の現場実装の推進
  • デジタル技術等を活用した監督検査等の効率化の実現

言葉を開いておきます。

ICT施工とは、ドローンや3Dスキャナで測って、その3次元データをそのまま重機の制御や出来形の確認に使う施工のやり方です。丁張りを掛けて、検測して、野帳に書いて、図面に起こす——という一連の流れを、データ1本で通してしまう考え方です。

フィジカルAIとは、カメラやセンサーで周りを見て、AIが判断して、機械が実際に動くしくみのことです。文章や画像を返して終わるAIと違い、出口が画面の外にあります。

監督検査とは、発注者の職員が現場に来て、施工が図面どおりかを確認する仕事です。ここを「デジタル技術で効率化」と書いているのは、遠隔臨場——スマホやウェアラブルカメラの中継で立会いを済ませる——を広げる、という意味です。

そして一番上に置かれているのが、地方公共団体におけるICT施工の技術者支援です。国の直轄工事ではなく、都道府県や市町村の発注する工事のほうを名指ししています。

あなたの会社では、どの作業にあたるか

いま並べた5つを、地場の会社の一日に置き換えると、こうなります。

ICT施工の導入が自治体に降りてくるというのは、これまで「見積参考」だった項目が、市町村工事の特記仕様書に条件として書かれるようになる、ということです。起工測量をドローンでやること、出来形を3次元で提出すること。受注してから「これ、うちでできるのか」と気づくのがいちばん困る種類の変化です。

監督検査の効率化とは、あなたの現場でいえば、市の担当者の立会いのために半日空けて待っていた、あの時間です。遠隔臨場に切り替わると、待ち時間は減りますが、代わりに現場でカメラを繋ぐ人と回線が要ります。

BIM/CIMのデータマネジメントとは、電子納品の話です。すでに苦労している会社が多いところで、求められる形が増える方向にあります。

このどれかに心当たりがあるなら、来年度以降に条件が動くのは、あなたが普段受けている工事のほうです。

中小向けに、新しい補助金の枠が立っています

同じ日に公表された、不動産・建設経済局の要求資料のほうに、もう一つ具体的なものがありました。

建設市場整備推進事業費補助金という項目で、狙いはこう書かれています。「『地域の守り手』となる地方の中堅・中小建設事業者及び建設関連事業者の、調査・設計・施工管理におけるICT技術への習熟を深め」ること。事業期間は令和9年度からです。

資料から読み取れる形は、次のとおりです。

  • 補助率は2分の1以内
  • 対象は、防災訓練や復興段階の現場でICT機器を使うことを想定した訓練にかかる、機器の導入と活用の費用
  • 対象機器の例として、ICT建機、ドローン、ウェブカメラ、ウェアラブルカメラが挙げられている
  • 申請の経路は、国から補助事業者へ、そこから各都道府県の建設業団体等へ、そして会員企業へ、という間接補助のかたち

そして資料には、こう書き添えられています。「購入した機器については、訓練の実施期間以外の期間では、平時の工事においても活用可能」。

訓練のために買ったドローンやウェアラブルカメラを、普段の工事で使ってよい、と明記されているわけです。これが要求どおり通れば、県の建設業協会を通じて、機器代の半分で入れられる道ができることになります。

この秋のうちに、確かめておけること

この件で自分の会社について数えられるものが、2つあります。

ひとつは、直近1年で受けた自治体の工事の特記仕様書を並べて、ICT施工・3次元出来形・遠隔臨場のどれかが条件に入っていたものが何件あったかを数えることです。ゼロだったのか、1件混じっていたのか。今の位置が分かります。

もうひとつは、加入している都道府県の建設業団体に、令和9年度のICT機器の補助の話が来ていないかを聞いてみることです。間接補助は団体が窓口になる形なので、話が回りはじめるとしたら、そこが最初になります。予算が決まるのは年末ですから、いま聞いても「まだ何も」と返ってくる可能性のほうが高いはずです。それでも、聞いておいた相手のところには、決まったときに情報が来ます。

金額が4.36倍になったこと自体は、まだ何も起きていないのと同じです。動くのは、それが特記仕様書の一行になって、自分の会社の見積に返ってきたときです。

出典

株式会社MAPACT(埼玉県春日部市)
中小企業のAI導入を支援しています。やっていること

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