BLOG 2026.08.19
見積の「抜け」は、単価の間違いより高くつく ── 建設業の見積を一式で持つ
単価を揃えても、見積は良くならなかった
過去の見積を掘り起こして単価を整理したところまでは、以前に書きました。ところが、単価が揃っても見積の精度は思ったほど上がりませんでした。
理由は、現場を長くやっている人の一言ではっきりしました。
「見積を作るというのは、一つ一つの工事を頭の中で終わらせることだ」
単価表から項目を拾う作業ではない、ということです。掘って、基礎を打って、鉄筋を差して、積んで、埋め戻して、残土を運び出す。その全部が頭の中で最後まで終わっていないと、どこかが抜けます。
そして抜けは、単価の間違いより高くつきます。 単価が5%高ければ5%高い見積が出るだけですが、項目が1つ抜けていれば、発注をもらった後に追加をお願いすることになります。金額以上に、信用の問題になります。
単品ではなく「一式」で持つことにした
そこで、単価を1行ずつ選ぶのをやめ、工事を一式で持つことにしました。
たとえばブロック塀の新設なら、聞くのは3つだけです。高さ(何段積むか)、長さ、そして小型のショベルカーが入れられるかどうか。そこから明細が9行出ます。掘削、砕石、型枠、生コン、鉄筋、ブロック積み、埋戻し、残土処分、それに小型のショベルカーの運搬費。
このうち人が真っ先に思い出すのは「ブロック積み」です。抜けるのはいつも、主役ではない行のほうでした。残土処分、埋戻し、機械の運搬費。工事名にならない行ほど落ちます。
一式を作るときに決めたルールが1つあります。一式は「開始状態」と「完了状態」で定義する。 前の工事の完了状態が、次の工事の開始状態になるようにつなぐ。こうすると、重なり(二重計上)も隙間(現場での追加)も構造的に出にくくなります。ブロック塀の新設は開始状態が更地なので、既存の塀の解体は別の一式に置く、といった具合です。
いまこの形で持っているのは10工種。よく出るものから順に、実際の見積を見ながら足しています。
うまくいかなかったこと ── 1行ずつ聞いたら、組で壊れた
失敗も書きます。
単価を最新にするため、実務に詳しい社内の担当者に11項目を確認してもらいました。このとき、確認シートを「建値」と「原価」を別々に選ぶ様式で作りました。1項目ずつ独立に判断できるほうが答えやすいだろう、と考えたためです。
結果、11項目のうち3項目が、組み合わせた瞬間に成立しない数字になりました。原価が建値を上回ってしまうもの(逆ざや)、粗利が1%を切ってしまうもの、そして単価の単位が「枚あたり」なのか「mあたり」なのか確定しないまま入りかけたもの。
原因は答えた側ではなく、聞き方にありました。 建値と原価は本来ひとつの判断です。別々に選べる様式を出した時点で、組み合わせが壊れる余地をこちらが作っていました。
直したのは2つです。
1つは、機械の側に安全弁を入れたこと。粗利が5%を下回る組み合わせは、登録を自動で止めるようにしました。人がうっかりしても、そこから先へは行きません。
もう1つは、シートの様式を変えたこと。建値と原価を別々に選ばせるのをやめ、組み合わせ済みのA案・B案を出して、どちらかを選んでもらう形にしました。判断の回数が減り、破綻する組み合わせはそもそも選択肢に出てきません。
同じ確認作業で、もう1つ分かったことがあります。単位を揃えずに比べると、結論が逆になります。 ある処分費は、台あたりで比べると「登録済みの単価が高い」、㎥あたりで比べると「安い」でした。最初に作った比較表は、この単位違いのせいで逆の結論を書いていました。
数字で言えること、まだ言えないこと
一式で持つようにして、見積の抜けがどれだけ減ったか。これは数字で取れていません。 追加工事の発生率を工事ごとに記録する仕組みが、まだこちらにないためです。ここは正直に書いておきます。
いま言えるのは構造の話までです。3つ答えれば9行が出て、その9行は毎回同じ顔ぶれで出る。人の記憶に頼っていた部分が、そのぶん減りました。
明日からできること
システムを入れる前に、紙とペンでできることがあります。
直近の見積を1枚出して、その工事を朝から順に口に出してみてください。 現場に着いて、何を降ろして、何を掘って、最後に何を積んで帰るか。出てきた作業のうち、見積の行に無いものが「抜け」です。
もう1つ。業者さんから単価をもらうときは、「御社はどこからどこまで込みで見ていますか」を必ず一緒に聞いて、単価と並べて記録してください。 同じ工事名・同じ単価でも、基礎コンクリート込みの会社と、積む手間だけの会社があります。範囲が分からない単価は、あとで必ず揉めます。
一式という考え方は、便利機能ではなく、品質保証の仕組みだと思っています。
株式会社MAPACT(埼玉県春日部市)
中小企業のAI導入を支援しています。やっていること
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