BLOG 2026.09.07
土木工事共通仕様書が、AIの読める形で公開されました
9月4日、国土交通省が「国土交通省インフラ分野のAI実装に向けた取組方針」と「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)」を策定しました。8月26日に開かれた第13回インフラ分野のDX推進本部で決めたものです。
方針そのものは、これから何年もかけて進む話です。ただ、発表資料の1ページ目の下のほうに、注意書きのような形で、もう終わっている話が1つ混じっていました。
「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」を、AIが読める形にしてウェブで公開した、というものです。予告ではなく、URLが載っていました。開いてみたら、本当にありました。
これを読み進めて分かったのは、国がいま最初に手をつけているのは、AIそのものではなく、書類の側だということです。
「AIが読める形」とは、どういうことか
まず言葉から。ここでいうAIは、ChatGPTのように、文章で質問すると文章で答えてくれるもの(生成AI)です。
生成AIにPDFを渡して質問すると、それらしい答えは返ってきます。ただ、「それはどこに書いてありましたか」と聞き返すと、あやしくなる。PDFは、人が読むための紙をそのまま画面に写したもので、機械から見ると文字が並んでいる絵に近いからです。どこからどこまでが第何条なのか、機械にわかる印がついていません。
今回公開されたものは、そこが違います。共通仕様書がふつうのウェブページになっていて、そのページの中に、人の目には映らない機械用の札が貼ってあります(JSON-LDという書き方です)。
実際に中を開いて確かめると、こうなっていました。
- 編・章・節・条・項のそれぞれに、「1-1-1-1」のような通し番号が振ってある
- その番号ごとに、そこだけを直接開けるURLがある
- 条文が建設業法などの法令を引いている箇所には、e-Gov(国が出している法令のデータベース)の該当ページへのリンクが張ってある
つまり「第1編第1章第1節第1条の3を見せてくれ」と、機械に頼める状態になっています。
数えてみると、1,804本ありました
公開されている8編の目次を数えたところ、条は1,804本ありました。
公開されている目次を数えたものです。番号を指定すれば、その条だけを直接開けます
道路編だけで696本。人が端から読んで覚えておける量ではありません。実務でも、通して読むものではなく、必要になったときに引くものとして扱われているはずです。
あなたの会社では、これは「あの基準値、いくつだったか」を探す作業にあたります。盛土の締固めの基準を確認する。コンクリートの養生日数を確かめる。出来形の規格値が今年変わっていないか見に行く。厚いファイルをめくるか、PDFを開いてページ内検索をかけるか。年に何十回もやっているのに、毎回同じだけ時間がかかる種類の作業です。
ここが番号で引ける形になったということは、AIに聞いたときの答えが「たぶんこうです」から「第◯編第◯章第◯条にこう書いてあります」に変わりうる、ということです。当たっているかどうかを、その条を開いて自分の目で確かめられるようになります。
受注する側に、いちばん近いのはこの一つ
取組方針の中には、元請として仕事を受ける会社に直接ぶつかる項目もありました。「AI臨場」です。
臨場というのは、工事の途中や完成のときに、発注者側の監督職員が現場へ来て、出来上がりの寸法などを確かめることです。日を合わせて、段取りをして、黒板を作って、立ち会ってもらう。あの一連です。
資料にはこう書かれています。発注者が構造化した基準・規格値と、受注者が現場で計測した出来形データを、AIが照合を支援する。目的として挙げられているのは「現地臨場頻度の削減と監督検査の効率化」です。
さきほどの共通仕様書のHTML化は、この「発注者が構造化した基準・規格値」の側の第一歩にあたります。基準が機械に読める形になっていなければ、そもそも照合させようがないからです。
納品の形についても書かれていました。設計図書・報告書・計測及び点群データ等の成果物を、AIが参照・学習しやすい構造化データとして整備するため、従来のPDF主体の納品形態を見直す、と。
明日、自分の会社で確かめられること
大きな制度の話に見えますが、確かめる先は自分の会社のフォルダです。
去年終わった工事を1件開いて、次の3つを見てください。
1. 出来形の測定結果は、どの形で残っているか。表計算ソフトの数字のまま残っているか、それとも印刷してPDFにしたものだけか
2. その基準値を、どこから引いてきたか。出どころ(どの仕様書の、どの年度の版か)が、書類のどこかに残っているか
3. 同じ工種を次に受けたとき、そのフォルダから持ってこられるか。それとも、また一から探し直すことになるか
数字が数字のまま残っている会社は、照合をAIに任せる側に回れます。全部を紙の形に固めて納めてきた会社は、まず手元の数字を取り出すところからになります。この差は、制度が変わるのを待たずに、いま動いている工事のうちから開き始めます。
出典
株式会社MAPACT(埼玉県春日部市)
中小企業のAI導入を支援しています。やっていること
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