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BLOG 2026.09.01

AIがまず減らしたのは、探している時間でした

建設業でもAIの話をよく聞くようになりました。ただ、自分の会社で何がどう変わるのかは、まだぼんやりしていると思います。

そこで2026年の6月から8月に出た発表を、発表元の資料まで開いて確かめてみました。時間が何時間から何時間になったという数字がついているものだけを並べると、共通点が1つありました。

減っているのは、考える時間ではありません。探している時間です。

設計の調べものが、週4.3時間から1.4時間になった

大林組が8月19日、設計の初期段階でおこなう法令調査と要件整理にAIを試験導入したと発表しました。1人あたり週4.3時間かかっていたものが1.4時間になったとしています。

法令調査というのは、その建物にどの規則がかかるのか、どこに何が書いてあるのかを探す仕事です。

週に半日近く使っていた調べものが、1時間半で終わる計算になります。ひと月を4週として計算すると、17時間ほどが6時間ほどになります。

ここで大事なのは、AIが設計の中身を決めたわけではない、という点です。決めるのは人のままで、消えたのはどこに書いてあるかを探していた時間のほうでした。

会社の規模が違っても、この形の仕事は同じようにあります。役所の要綱を当たる。似た現場の見積を過去のフォルダから探す。仕様書のどこに書いてあったかを見に行く。

ここで出てくる「AIエージェント」という言葉

最近の発表には「AIエージェント」という言葉がよく出てきます。初めて聞くと身構えますが、中身はそれほど難しくありません。

これまでのAIは、聞いたら答える道具でした。一問一答です。

エージェントと呼ばれているものは、頼まれたことを自分で細かい手順に分けて、何度も調べ直して、答えを持ってくるところまでやります。一問一答が「辞書」だとすれば、エージェントは「調べものを頼める新人」に近いです。

新人と同じで、頼み方が悪ければ的外れなものが返ってきますし、出てきたものには確認が要ります。そこは変わりません。

トンネルでも、同じことが起きていた

大成建設が7月22日に発表した「DataPit」という仕組みも、形は同じでした。山岳トンネル工事で、地山の計測値や切羽の観察記録を自動で集めて、資料の形にするものです。

月に3日ほどかかっていた一連の作業が、5分になったとしています(初期設定を除く)。

上のうすい棒がAIを入れる前、下の赤い棒が入れた後。長さは数字の比で、トンネルの5分は短すぎてほとんど見えません
上のうすい棒がAIを入れる前、下の赤い棒が入れた後。長さは数字の比で、トンネルの5分は短すぎてほとんど見えません

これも、工事の良し悪しを判断させたわけではありません。バラバラの場所にあるデータを集めて、決まった形に直す。その部分だけが消えています。

現場写真を日付と場所で並べ替えて台帳にする。日報の数字を集計表に書き写す。同じ形の作業は、どの会社にもあります。

逆に、まだほとんど減っていないもの

ここまで読むと進んでいるように見えますが、全体の数字は別の話をしています。

国土交通省が4月28日に公表した資料によると、機械が自分で施工した工事は、2025年度で9件でした。前の年度の4件から倍増しています。ただ、全国で9件です。離れた場所から操作する遠隔施工も41件でした。

清水建設は7月8日、人の形をしたロボットに現場を見回らせる実証を本格化すると発表しています。建設中のビルの現場で、カメラを積んだロボットが秒速1メートルで自分から歩けることを確認した、という段階です。人がゆっくり歩くくらいの速さです。

AIを使っている人の側から見ても同じです。Anthropicが6月に公表した調査では、建設や採掘、運送、調理といった体を使う職業の人は、AIを使っている割合が、その職業が世の中の仕事に占める割合よりも著しく少ないと報告されています。

事務所の仕事は動きはじめていて、現場そのものはまだ動いていない。 これが今の位置です。

15人以下の会社を名指しした道具も出てきた

7月にもう1つ、目を引く発表がありました。コンクルーという会社が、見積作成と予算管理のAIを始めています。チャットで指示すると見積の明細を作り、直し、受注後の予算の変更まで追う、というものです。

中身より、誰に向けたものかを書いている点が珍しいところです。対象を「従業員15名以下の中小建設会社」と明記し、価格を月9,900円から(税込10,890円)と公表し、14日間の無料期間を用意しています。

建設向けのAIは価格を出していないものが多く、たいていは問い合わせて見積を取るところから始まります。金額が書いてあって、先に試せるものは、少なくとも自分の会社で判断ができます。

AI業界の大きな買収も、同じ線の上にあった

7月末、建設管理ソフトで世界最大手のProcoreが、DroneDeployという会社を約8億4,500万ドルで買収すると発表しました。DroneDeployは、ドローンで現場を撮って、その映像を解析する会社です。

工事の記録を貯めるソフトの会社が、現場を見て気づくソフトに、それだけの金額を払ったことになります。向かっている方向はわかりやすいと思います。

ただしこれも、できるのはまだ「見て、気づく」ところまでです。掘る、組む、締めるは人のままでした。

で、どこを見ればいいか

この夏の数字をひととおり見たうえで、自分の会社で最初に確かめるとしたら、探している時間だと思います。

  • 過去の見積や図面を探している時間
  • 役所や元請の様式に、すでにあるものを書き写している時間
  • 写真や書類を並べ替えて、形を整えている時間

この3つが1週間に何時間あるか。そこが、いまのAIがいちばん確実に効くところです。

逆に「職人の判断をAIに置き換えられないか」から入ると、この夏の数字を見るかぎり、まだ早いという答えになります。

順番としては自然だと思います。書類はもともとデータの形をしていて、間違えても取り返しがつきます。現場は逆で、そのどちらも当てはまりません。

だから今いちばん確かめる値打ちがあるのは、現場ではなく、机の上に積まれているほうの仕事です。

出典

株式会社MAPACT(埼玉県春日部市)
中小企業のAI導入を支援しています。やっていること

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