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BLOG 2026.09.04

AIの懸賞金に応募するのは、開発会社ではなく使う側の会社です

この記事は2026年9月4日時点の情報です。応募締切(2026年9月30日)を過ぎている場合は、最新の募集状況を、記事末の出典にあるNEDOの公式ページでご確認ください。

今月末に締切のあるものを、ひとつお知らせします。

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が「GENIAC-PRIZE」という懸賞金のプログラムを公募しています。今年度のテーマは「エッセンシャルワーカーの人手不足解消に資するAIを活用した業務プロセス改革」。締切は2026年9月30日(水)昼12時です。

このプログラムには4つの省庁が協力省庁として入っていて、そのひとつが国土交通省です。国土交通省が出している課題は、はっきり建設業のことを言っています。「建設・インフラ分野の担い手確保が課題です。AI活用による生産性向上・管理の高度化を期待します」。

ただ、この記事で本当にお伝えしたいのは懸賞金の額ではありません。応募要項を開いて手が止まったのは、応募資格の一行でした。

応募するのは、AIを作る会社ではありません。AIを使う側の会社です。

「懸賞金」は補助金とは仕組みが違います

まず言葉の整理から。補助金は、先にお金を受け取って、それを使って何かを導入するものです。懸賞金はその逆で、先に自分たちで取り組んで、その成果を出したところに賞金が出ます。順位がつくコンテストの形をとっています。

対象は「エッセンシャルサービス業」と書かれています。要項ではこう定義されています。人々の生活に不可欠な物品または役務を供給する業務。その従業員がエッセンシャルワーカーです。協力省庁は警察庁、厚生労働省、国土交通省、農林水産省の4つで、それぞれの分野の課題が示されています。

応募資格は「使っている側であること」

要項の応募資格には、こう書かれています。日本国内の法人、団体および農業・林業・漁業経営体(個人を含む)。そこに但し書きが付いています。「応募者はユーザーであることを条件とします」。

続けて、ユーザーが必要に応じて開発者と組んで応募することも可能、とあります。

つまり資格になるのは、技術を持っていることではありません。困っている現場を持っていることです。AIの会社が「こんなものを作りました」と応募する場ではなく、現場を抱えている会社が主役になるように作られています。

9月30日に出すのは、まだ「予定」です

ここも読み違えやすいところでした。9月30日までに提出するのは「取組概要」で、中身は取組予定の内容、利用する基盤モデル、取組体制(ユーザー・開発者)です。予定です。

実際の成果物である提案書とデモ動画の締切は、11月末。開発と実証はそのあいだに行う想定になっています。審査は12月から3月、結果発表と表彰は3月下旬です。

9月30日の時点で、動くものが出来上がっている必要はありません。出すのは「これから何をやるか」の紙です。ここを「もう完成していないと出せない」と読んで見送ってしまうと、実際より高い壁を自分で立てることになります。

順位ごとの懸賞金。これとは別に、審査員特別賞と、国土交通省などの協力省庁特別賞が用意されている
順位ごとの懸賞金。これとは別に、審査員特別賞と、国土交通省などの協力省庁特別賞が用意されている

順位ごとの懸賞金は1位が1億円、以下8,000万円、6,000万円、4,000万円、2,000万円です。これとは別に審査員特別賞(総額約3億円)と協力省庁特別賞(総額約2億円)があり、そのうち国土交通省賞は総額約5,000万円と示されています。

募集されている3つの領域は、自社のどの作業にあたるか

国土交通省が公開している資料には、インフラ分野の募集対象領域として3つが挙げられています。現場施工(自動施工、工程・施工管理など)、維持管理(巡視、点検、異常検知など)、災害対応(現地調査、衛星利用など)。

言葉が大きいので、日々の作業に置き換えます。

工程・施工管理とは、明日どの職人をどの現場へ入れるかを毎晩決め直し、段取りが変わるたびに電話で人を押さえ直す作業です。予定表は朝には古くなっています。

巡視・点検とは、決まった路線や施設を回って傷んでいる箇所を見つけ、写真を撮り、前回の写真と見比べて「進んでいるのか、変わっていないのか」を判断する作業です。判断できるのは、その現場を何度も見ている人だけです。

災害調査とは、大雨が上がった翌朝に手分けして現場を回り、どこから手を付けるかを決める作業です。決めるのに必要な情報は、たいてい全部は揃っていません。

このどれかに「うちの誰か一人しかできない」と言える作業があるなら、それがそのままユースケースです。

ひとつ、条件があります

見落とすと後で困る条件がひとつあります。要項にはこうあります。開発・実証においては、いずれかの国産基盤モデルの活用を必須とします。

国産基盤モデルとは何かも定義されています。日本国内で登記され、かつ国内に開発拠点を持つ企業や大学等が開発したモデル。ゼロから作ったものだけでなく、既存のモデルを追加学習したものや、国産モデルを調整したものも含まれます。

「基盤モデル」というのは、文章や画像を扱うAIの土台になっている大きなモデルのことです。多くの会社が普段使っているサービスは、海外で作られたモデルの上に乗っています。ここを国産のものに切り替える、あるいは国産のものを使った仕組みを作る必要がある。建設会社が自社だけで用意できる部分ではありません。開発者と組んで応募できると明記されているのは、このためだと読めます。国産基盤モデルの開発事業者の一覧は、プログラムのサイトに掲載されています。

昨年度は、どれくらい応募があったのか

前年度の審査結果も公開されています。2025年度の社会課題領域は「製造業の暗黙知の形式知化」に58件、「カスタマーサポートの生産性向上」に56件の応募がありました。1位はダイキン工業とFairy Devicesの組、2位は三菱重工業とAlgomaticの組です。大きな会社と開発会社が組んだ形が上位に並びました。

今年度は、順位の賞とは別に「地域賞」と「チャレンジ賞」が設けられています。チャレンジ賞の説明はこうです。成果に関わらず、難しいユースケースに果敢に取り組む応募に対して授与します。

応募しなくても、書いておく価値のあるもの

9月30日までに書くのは、どの作業を、誰と組んで、どう変えるつもりかという紙一枚です。

その紙を書くために必要なのは、AIの知識ではありません。自社のどの作業が、特定の一人が抜けたら止まるのかを、作業の名前で挙げられることです。工程を組む人、点検の写真を見て判断する人、災害時にどこから回るかを決める人。名前が浮かぶなら、その作業を書き出せます。

応募するかどうかは、書き出してから決めても遅くありません。書き出したものは、応募しなかったとしても手元に残ります。

出典

株式会社MAPACT(埼玉県春日部市)
中小企業のAI導入を支援しています。やっていること

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