BLOG 2026.09.05
AIがソフトの画面を自分で操作するようになりました
OpenAIが9月3日、新しいAI「GPT-6 Astra」を発表しました。ニュースでは「世界でいちばん賢いモデル」という紹介のされ方をしています。
ただ、発表資料を最初から開いて建設業の目で読むと、今回いちばん大きいのは賢さではありませんでした。このAIの目玉は、人の代わりにパソコンの画面を操作することです。
そしてこれが、建設業にはよく効きます。理由はひとつです。建設業の仕事は、いまも「専用のソフトの画面を、人が手で操作する」形でたくさん残っているからです。
「コンピュータ操作」とは何のことか
言葉の整理から始めます。
これまでのAIは、文章や写真を受け取って、文章や判定を返すものでした。入口も出口も、こちらが用意した箱の中です。だから会社のソフトに仕事をさせるには、AIとソフトをつなぐ通り道を、ソフトの側があらかじめ用意している必要がありました。「AI対応」とうたっているソフトは、この通り道を作ったソフトのことです。
今回発表されたものは、そこが違います。人と同じように画面を見て、押す場所を決めて、欄に打ち込みます。発表資料が挙げている例は、こういうものです。入力フォームを埋める。顧客管理ソフトの記録を更新する。予定表を整理する。画面に出ているトラブルの原因を調べる。
つまり、ソフトの側が何も対応していなくても、画面さえあれば任せられる、という形です。
どのくらいできるのか
発表資料には測定結果が並んでいます。読む人に関係のある2つだけ引きます。
ひとつは、画面のどこを押せばよいかを正しく指させた割合です。ScreenSpot-Pro という試験で92.7%。ひとつ前のモデルは76.9%でした。
もうひとつは速さです。パソコン作業を通しでやらせる OSWorld 2.0 という試験で、1件あたりにかかった時間が約75分から約40分になりました。しかも、正しくやり遂げた割合も65.7%から72.6%へ上がっています。速くなった代わりに雑になった、ではありません。
同じ試験をひとつ前のモデルと並べたもの。測定は実際の業務ソフトではなく、試験用に用意された画面で行われています
数字は良くなっていますが、92.7%は100点ではありません。100回のうち7回ほどは、違うところを指します。ここは後でもう一度触れます。
自分の会社の、どの作業にあたるか
大事なのはここです。「フォームを埋める」「記録を更新する」を、建設会社の一日に置き換えると、こうなります。
- 積算ソフトへ、拾った数量を一行ずつ打ち込む
- 現場から上がってきた請求書の数字を、原価管理の画面へ写す
- 写真台帳のソフトで、写真を工種と日付で振り分ける
- 電子申請や作業員名簿の画面へ、同じ会社名・同じ現場名を何度も入れる
- 発注書と注文請書の内容を、社内の管理表へ転記する
並べてみると、共通点がひとつあります。どれも「もうどこかに書いてある数字を、別の画面へ移しているだけ」です。判断をしていません。それでも人がやっているのは、そのソフトに通り道が無いからです。
つまり、この5つが人の手に残っている理由は、難しいからではなく、つながっていないからでした。
「うちのソフトはAI対応していない」が、断る理由でなくなる
ここが、判断の変わるところです。
これまで、AIに何かを任せようとすると、道はひとつしかありませんでした。AI対応をうたう新しいソフトへ乗り換えることです。使い慣れた積算ソフトも、社内でしか通じない管理表も、対応していなければ諦めるしかありませんでした。「うちのソフトは対応していないので」は、正しい断り方でした。
画面を直接操作できるAIが出てくると、その前提が動きます。乗り換えなくても、いまの画面のまま任せられる可能性が出てきます。
だから今日いちばん実務に効く結論は、こうです。ソフトの乗り換えを検討している会社で、その理由が「AI対応かどうか」だけなら、いま急いで決める必要はありません。半年から一年、様子を見る価値のある変化が起きています。
図面と3Dの話も、少しだけ
同じ発表資料には、建設業に近い試験もありました。BenchCAD という、いくつかの方向から見た画像をもとに3Dの形をCADで組み直せるか、という試験で95.9%。実演では、家を3Dソフトで組んで、そのまま中を歩ける場面に変えていました。建つ前に施主と中を見て回る、という使い方に近いものです。
ただしこれは発表側が用意した実演で、建設会社の実務で試された結果ではありません。設計図から確認申請までを任せられる、という話ではないことは、はっきり書いておきます。
そのまま明日から使える、という話ではありません
正直に書きます。今日の時点で、次のことが分かっています。
- 提供はまず限られた組織から始まり、そのあと数日かけて有料の利用者へ広がる形です。会社向けの契約では、管理者が有効にするまで既定では使えません
- 開発者向けの利用料は、入力が100万トークンあたり10ドル、出力が100万トークンあたり50ドルです。為替は日々動くので、円には換算しません
- そして先ほどの7%です。転記は、間違いが静かに残る種類の作業です。打ち込む人が変わっても、間違いに気づく仕組みが無ければ、間違いは同じだけ残ります
三つ目がいちばん重要です。人がやっている転記は、たいてい「やった本人が違和感で気づく」に頼っています。その部分だけは、渡す前に自分の会社で作らないといけません。
来週、数えられること
この記事を読んで、自分の会社で確かめられることが三つあります。
- 一週間のうち、もうどこかにある数字を別の画面へ写している時間が何時間あるか。それを誰がやっているか
- そのうち、間違えたときに誰かが気づく仕組みがある作業はどれか。気づく仕組みが無いものは、AIに渡す前に人がその仕組みを作る側から始める
- いま乗り換えを考えているソフトがあるなら、その理由が「AI対応」だけになっていないか
最初の一つを数えるだけで、この先の判断がだいぶ楽になります。時間が少なければ、急ぐ話ではありません。多ければ、その作業は、つながっていないという理由だけで人の手に残っていたことになります。
出典
株式会社MAPACT(埼玉県春日部市)
中小企業のAI導入を支援しています。やっていること
← 記事の一覧へもどる